顔の見える木材での家づくりとは
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現在はこれに加えて、工務店などが中心となり、これまでとは一味違った地域材活用のネットワーク運動が活発化している。
一つは地域材を現しで使うという点。一つは真壁(風)な内装空間としている点。一つは無垢の床材や内装材が使われている点。つまり、大壁、壁紙内装、複合フローリングといった新建材による住宅づくりと対照的な住空間が作り出されている。
もちろん、この空間デザイン以外に地域や工務店によって性能面での特徴づくりなどがなされているが、基本は地域材を無垢(自然素材)で使う、という点に特徴がある。
もう一つ注目すべき点は、工務店が住宅市場における競合力を確保し、住まい手がその家づくりに付加価値を認めるような「家づくりの物語」を、地域材を足掛かりに作り出したこと、作り出そうとしている点に大きな意味がある。物語とは、林家・素材生産・製材業者との、顧客が具体的に可視することが可能な関係性であり、品質に対する確認まで含めて顧客の家づくりの物語が作られていく。
こうした、山側と工務店や設計事務所が連携した「顔の見える関係」ネットワークを「顔の見える木材ネットワーク」と呼ぶ。
なぜ、このようなネットワークが増加しているのだろうか。
ネットワーク増大の背景
地域の工務店(地域で住宅設計を行う設計事務所も同様だが)において、この5年間はある意味で「55年体制の崩壊」現象に似たような状況を迎えていた。平成12年の建築基準法の改正。欠陥住宅問題を緒とした品確法の施行。そして同年秋口からスタートした住宅性能表示制度。さらに、平成15年に施行された建築基準法における「シックハウス対策」(ホルムアルデヒド対策であるが)と矢継ぎ早に「消費者保護施策への政策シフト」を意識させるに十分な法環境づくりであった。
その結果として、地域に存在する工務店だからできる家づくり、つまり「木の家」をつくり出す技能と技術を持つという意味を、住宅の形で明確にする方法として、地域材を使った家づくりへの取り組みが開始されてきた。
その意味では、工務店住宅の水準はようやく単純な工法や部品メーカーブランドに依拠しない住宅づくりへと駒を進めた、ということができる。
そして、このことを可能たらしめているのが、地域材の「品質(意識)」にあることは言うまでもない。
このネットワークの総称を林野庁命名の「顔の見える木材での家づくりネットワーク」と呼ぶとすれば、木材品質に対して責任を持つ生産者と、材評価と活用ポリシーを明確にする工務店と、そのような家づくりに共感する住まい手が揃うことで、それらが可能となっている。